Buon Natale!! :



★12/18★<side T×H >



「さみー、さみぃーぞ。」

「何だよ?暖房入ってるだろ?」



たまには二人もいいだろうと、獄寺を家に呼んだ。

当の獄寺はツナの家に行こうとしていたらしく、さっきから文句を並べてる。

でも、今日はオレに付き合え!ってことで、帰す気はさらさら無い。



「お前は、10代目にプレゼント何渡すんだ?」

「うーん。まだ決めてないけど…お前は?」

「オレも決めてないけど、お前よりはマシな物にする!」

「ハハハ。お前はそればっかりだな。」



どんな些細なことでもオレに勝とうと挑んでくる獄寺は、何つーか…可愛いと思う。

でもアイツの頭の中をほとんどを占めるのがツナのことっていうのがかなり厄介だ。

オレもツナのことは親友だと思ってるし、

本当にイイ奴だから、獄寺がツナを慕っているのは悪いことじゃない。

けど、一応、恋人という関係である以上、もう少しオレに目を向けてくれてもいいんじゃねーの?

と思うのは当然のことじゃないか?と思うんだが。



「赤い服着たひげのオッサンは、どうやって欲しいモン考えてんだろうな。」

「何だよ、それ?サンタのことか?」

「アイツ、何気にすげーよな。いろんな奴にプレゼント配りまくってんのに、間違えたりしねーのかな?」

「アハハハ、お前、おもしれー。」



時々出る、獄寺の子どもっぽい発想が好きだ。

一緒にいて飽きないと思うのは、こういう子どもっぽさが妙に可愛く思えるからだ。

でも、獄寺のそういう部分を知る度に、オレはコイツの本音を確かめたくなる。



「なあ、獄寺?」

「んあ?何だよ。」

「お前さ、どういうつもりでここにいる?」

「どういうつもりって何がだ?」

「ツナがいなくてさ…オレと2人で。こういう状況、どう思ってんのかなーって。」

「ハァ?…別にー。」

「別に…って何だよ。」

「だって、変わんねぇじゃん。朝、学校行く時とか、2人の時あるし。それと一緒だろーが。そういや、10代目、今頃何してんだろ?あ、お前もそれが気になってんのか?電話してみっか?」

「いや、そういうことじゃなくてよ…」

「じゃあ、何だよ?」



獄寺の目がまっすぐにオレを見る。何が言いたいのか分からないとばかりにちょっと首を傾げながら。



「オレの部屋で、2人っきりって状況で、何か思わねーの?」

「何か?」

「そ、何か。」



きょとんとオレを見る目が、何かに邪魔されることなく、オレだけを捉えられるように、まっすぐとその顔を見返す。



「オレは2人でいるの、すっげー楽しいんだけど?」

「何だよ、急に。」



突然のことに頭がついていかないのか、獄寺はちょっとむくれて口を尖らせる。



「お前、分かりにきーんだよ!言いたい事ははっきり言えよ!」



いつもオレに対してはトゲのある言い方をする奴ではあるけど、2人の時はそれに少しだけ、拗ねたような表情が混ざる。

そんな風に分かりやすく反応を返してくるから、思わず揶揄いたくなるんだ。

仕方ないだろ?…お前が悪い。



「はっきりねえ…うーん…好き…とか?」

「なっ!?…ば、ばかっ…おまっ…何…へっ?」



ストレートにそういう台詞を言われる事を何よりも苦手にしている恋人には、きっとこういうタイミングでしか言えないから、

冗談交じりな言葉に本音を含ませる。それでも素直な獄寺には確実に伝わるはず。



「お前はどうなんだよ?」

「〜〜〜っ。お前って、思ってたより、恥ずかしい奴だな。」

「アハハ。今頃、気付いたのか?」

「てめぇ、締め殺す!」

「まあまあ、で、どうな訳?この状況、獄寺は嫌か?」

「・・・・・・そんな事、わざわざ聞くんじゃねぇ。」



素直じゃないコイツにはきっとこれが精一杯。

その頬に照れでほんのり赤みが差して、なんとか平静を保とうと睨み付けるこの顔だけできっと十分。



「ま、いいけど。」



これでおしまい。

答えを急ぐことに意味は無い。それを聞きだすことにかける時間でさえも大事だと思うから。

また、いつか言ってくれるだろ。

それを待てるくらいには、ちゃんと“好き”なわけだし。



そんな感じで、期待してたわけじゃないし、獄寺の答えを得る事はすっぱりと諦めるつもりだったんだけど…

意外にも、サンタは身近な所にいたらしい。



「…しょうがねーから、また、来てやるよ。」

「え?」

「でも、10代目の家に行かない日だけだからな!」

「えっと…獄寺?」

「俺も、ここは嫌いじゃねーって言ってやってんだよ。有難く思え!」

「アハハハハハ、はいはい。感謝してるよ。」

「何笑ってんだ?山本の癖に生意気なんだよ、てめーは!!ちっ、てめーなんか蹴り飛ばしてやる!」

「痛い、痛い!」

「全然痛がってねーだろ、その口調は!!ムカつくー!!」



ほら、こんなサプライズ。ホントだな、サンタってすげー。

ちょっと勇み足のクリスマスプレゼントが教えてくれたのは、すごくシンプルなこと。



“特別な日じゃなくてもいい。一緒なら、それだけで極上の幸せ”



「明日、一緒に買いにいくか。ツナのプレゼント。」

「…しゃーねぇな。付きあってやるよ。」



クリスマスまで後1週間。

きっとクリスマスはツナの家で賑やかにパーティーだ。

まぁ、恋人たちのクリスマスを、みんなでにぎやかに!ってのも、いいんじゃねー?



だから、今だけは2人っきりで―――。





★12/24★<side D×H>


「恭弥、せっかくのクリスマス・イヴだ。ケーキでも食おーぜ?」

「…いらない。」

「まぁ、そう言うなって。わざわざイタリアから取り寄せたんだぞ?」

「それはご苦労なことだね。」

「クリスマスだし、ケーキでもなきゃつまんねーだろ?それに、どうせ食うなら美味いのがいいし。」



わざわざ取り寄せたケーキはパネットーネ。イタリアのクリスマスケーキだ。

日本のクリスマスケーキみたく、生クリームとかでデコレーションしているわけではなく、レーズンとかオレンジピールとかいろんなドライフルーツを混ぜた生地をドーム型に焼いた焼き菓子だ。程よい甘さで、香りも優しい。…日本でも買えない事はないけど、やっぱり本場のモノとはちょっと違う。

どうせ、食わせてやるなら!と向こうに連絡してこっちに送ってもらった。



「口開けろ。食わしてやるから」

「いらないって言ってるよね?噛むよ。」

「噛むなら、これ噛めー♪」

「…んぐっ!」



いつものように、つれない言葉を吐く口を強引に開けるため顎を押さえ、うっすら開いた口の中に小さくちぎったケーキを放り込んでやる。



「どうだ?うめーだろ?」

「……。」

「あれ?美味くなかったか?」

「……。」

「ん?どうした?…あ、もしかして、レーズンだめだったか?」

「ごほっ」

「おいおい。大丈夫か。」



図星だったんだろう、小さく噎せる恭弥の背中を摩ってやる。



「わりぃ。知らなかったからさー。嫌いだったんだな?次から覚えておくよ。」

「……。」

「お前、ホント負けず嫌いだな。好き嫌いしてるのが負けだとか思ってる?」

「煩いよ。」

「はいはい、ごめんごめん。」



ただでさえ多くは語らない奴だ、自分の素性を明かすことなんてほとんど皆無だ。

ホントは美味そうに食べる顔が見たくて用意したけれど、そんな恭弥の嫌いな物がうっかり見つかったのは嬉しい誤算だ。



「じゃあ、レーズンは避けてやるから、生地だけでも食ってみろよ?な?」

「……」



また無理矢理、口に入れられるのが嫌だったのか、今度はレーズンを避けてちぎってやったケーキを自分で口に放り込んだ。



「どうだ?」

「…美味しいけど。」

「そっか♪送ってもらった甲斐あったなー。」

「あなたに餌付けされてるようで気に食わないんだけど?」

「え?」

「今度はあなたの番だね。」

「……きょ、恭弥くん?もしかして、怒ってたり…なんかしないよ…ね?」

「クス…別に、怒ってなんかないよ。でも…美味しいケーキのお礼はしないといけないよね。」



恭弥の目が笑う。

明らかに戦闘前の楽しそうな顔だ。

厄介な相手に惚れたと思うけれど、この顔が嫌になるくらい可愛いのがクセモノだ。



「できれば、お礼は辞退…したいかなぁーなんて。」

「無理。」



着ているシャツの襟を掴んで、恭弥の方へ惹き寄せられる。



「僕はどうせ餌付けされるなら、この方がいいな。」

「何?〜〜〜痛っ!!」



頬に触れる柔らかな恭弥の髪。
一瞬何が起こったか分からなかったけれど、恭弥がオレから離れた後に首筋からジリジリと広がっていく痛みに嫌でも気付かされる。



「お前なー、ホントに噛むなよ。いってぇー。」

「綺麗な痕が残ってよかったね。しばらくはそのままだよ。」

「仕返しにしては長期戦じゃねえか?」

「仕返し?お礼だって言ってるでしょ。」

「どうせなら、ちゅーにしといてくれたら有難いんだけど?」

「何言ってんの?そんなのつまんないよ。少しは痛がってもらわなきゃ。」



バイオレンスな恋人を理解するには多少の痛みは覚悟しなきゃいけない。

頭では分かってはいるのだが、このままでは身体がいくつあっても足りないのではないかもしれない。



「も、もう少し、お手柔らかにお願いします。」

「これ以上?無理な相談だね。」

「マジで勘弁してくれー。」



だんだんと痛みが退いていくのを感じて、そっと、噛み痕に触れる。

押さえつけられた皮膚が窪んで、明らかに凹凸が出来ている。

近くにあった鏡で見てみると、周りに赤みを帯びていて、襟を立てても隠しきれない位置にそれはあった。



「やっべーな。見られたら変に思われっかなぁ。」

「変?」

「明らかにヤバい事してました!って感じだなぁ。」

「ふーん。別にいいじゃない?」

「おいおい、他人事かよ。」

「実際、他人事だしね。」

「お前なー。…もしかして、まだ怒ってんのか?」



思いっきり噛み付いてすっきりしたかと思っていた恭弥の言葉にはまだ棘がある。



「そんなにダメだったのか?レーズン。」

「煩いね。また噛まれたいの?」

「イイ事知っちゃったなー。実は恭弥、かなり好き嫌い激しいだろ?」

「…くっ」

「あっははは。お前は気まぐれ仔猫だもんなー。しょうがねーよなー?」

「やっぱ、噛み殺す事にするよ。」

「待って、ゴメン、嘘…やめろー!」


なんとか、もう1度噛まれるのを阻止して、恭弥を見ると、パネットーネの方を睨んでいる。

やっぱり相当苦手だったらしい。

そんな恭弥が無性に可愛く思えて、オレはまた痛みを覚悟で聞く。


「なあ、恭弥、これってさ、所有印だったりする?」

「は?」

「クリスマスだから、ちっとは恋人らしい事してくれたのかなー?って。」

「…ふーん。噛まれたくてしょうがないみたいだね?」

「ぎゃー!」



恭弥から言葉で本音を引き出すのはきっとすごく難しい。



それでも、何度でも確かめて、

おまけについてくる皮膚の痛みを乗り越えれば、甘美な真実が待っている。

それを知るのも、そう先の事ではなさそうだ。


それはきっと、このケーキよりも甘く――――。


恭弥の攻撃を交わしながらも、その顔を見つめる。

クリスマスの奇跡…だろうか。

“所有印なんてつけなくても、あなたはとっくに僕のものでしょ?”

そんな声がどこか遠くから聞こえた気がした。





<後書き>
クリスマスということで2本立てにしてみました。
いかがでしょうか?甘々を目指したんですが、ディノヒバなんて、完全にディーノのヘタレっぷりを
露呈したかっただけのように思えますが(苦笑)
これでも、この2CPならではのラヴラヴを目指したつもりです。
受けっこ2人は平気で殺すって言ってますけども(笑)愛情の裏返しってことで(殴)
雲雀に好き嫌いが多いってのは完全に捏造です。そうだったらかわいーなと(笑)レーズン嫌いも同じくww
毎度毎度捏造だらけですいません(汗)
次は思いっきりパロでいろんなキャラが出てくる長編も書いてみたいなぁと考え中。
宜しければ感想お待ちしていますww