延長線:1


<side.m>

「あぁー腹減ったぁ。」

「あ?さっきラーメン食っただろ。しかも替え玉して。」

「うっせー。腹減ったっつったら、減ったの!」

「っんとに、そのちっこい身体のどこに入るんだか。」



クスクスっと口の端を微かに上げて藍が笑う。

藍の笑い方はどこか上品だ。それは昔から変わらない。

俺は、昔からこの顔に見惚れていた。



「・・・・ちっこい言うなよ。」

「っくく・・・拗ねんなって。」

「拗ねてねぇー!」

「はいはい。」



俺の頭を撫でながら、藍の顔はまだ笑ったままだ。

クラスの奴は言う。藍は俺の保護者みたいだと。

藍もそういう風に俺のことを見ている気がしてた。

多分、間違いないと思う。


藍はいつも俺より3歩ほど先を歩いている。

追いつきたくても追いつけない。少し前にある藍の背中をずっと見てきた。

そんな藍の事が好きだと自覚したのはいつのことだっただろう。

あまりに時間が経ち過ぎて、もう思い出せやしない。


親友という立場で何とか抑えてきた恋心は、あの日あまりにも簡単にかわされてしまった。

同じ親友という言葉を使って。

もう1度、告白する勇気は俺にはなかった。

だから、これから先も、俺は藍の背中をずっと見ていくんだ。

いいんだ。それで。他には何も望まない・・・望むことなんて出来やしない。




「藍、次はアイス食いに行こーぜ。」

「また、ダブルか?」

「今はトリプル!」

「・・・腹、壊すなよ。」

「うるせーよ!かーさんみたいなこと言ってんじゃねぇよ!ばーか!」



悪態をつく俺をみて、また藍が笑った。

いつもみたく上品に優しげな眼差しで。


「・・・笑ってんなよ。」


嘘。もっと、笑ってて。

あの日から、俺の願いは変わった。

想いが重なることを望めないなら、

せめて、いつまでもその笑顔の傍にいたい。


・・・それくらいは許せよな、藍。




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