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水深とは、これからもかわらず今までのまま、友達でいられたら・・・
そう、思って、気付かぬフリでいたけど。
それはきっと、俺のエゴでしかないから。
俺は決めた。
水深と、距離をとること。
昨日まで、あんなに大切だった友達を、俺は失うことを考えている。
他にも方法はあるだろうと迷う声がどこからともなく聞こえる気がする。
だけど・・・
きっと、これはお互いのためだ。
「藍くん?」
「あ、大地か。」
「どうしたん?みなみが元気ないと思ってたら、今度は藍くんか?」
「いや、なんでもねえよ。」
大地は俺の顔をじーっと見て、額を軽く指で弾いた。
「あんなぁ、分かりやすい顔で沈んどるのに、なんでもないはないやろ?」
「・・・悪い。」
「・・・みなみのこと?」
「え?」
「みなみの事で考え事してるんやろ?」
「・・・・・」
「2人ともほんま、分かりやすいなぁ。」
大地はからかう様に俺の顔を見た。
大地は時々、俺以上にみなみのことを分かっている時がある。
「俺ね、恋人待つの、やめたんよー。」
「え?」
「帰ってきそうにない人を待ってるの疲れてもーたから、新しいの見つけてん!」
「新しいのって。」
「一人の人想い続けるんってしんどいねんで?」
「・・・」
「ちょっと似てるからかなぁ、みなみのそういうん、俺分かるんよね。」
「お前・・・」
「みなみは分かりやすいから。・・・藍くんも気付いてるんやろ?」
「・・・・・ああ。」
「あんまり、いじめたったらあかんよ?」
大地の目は、俺に何を言いたいのか伝えるには十分で。
それは自分でも嫌になるほど、分かっていることだった。
「分かってる。ちゃんと・・・する。」
「・・・うん。」
大地は遠くの方を見つめた。
そして、ふっと寂しそうな顔をする。
「やっぱ、あかんねんな。」
「・・・」
「みなみ、泣くかもな。」
「・・・しょうがないだろ。」
「・・・・そうやね。・・・その時は任されたってもええよ。」
「・・・・ああ。頼む。」
「高いで?」
「・・・・分かってる。」
親友を失うこと。
その想いの形は違っても、好きだと言えるヤツとの関係を断ち切ること。
その代償は、どれくらいだろう・・・
でも、それは、俺に出来る精一杯。
愛とは違う情のかけ方。
「藍くん。俺は時々は嘘も必要ちゃうかなって思うんやけどな。」
揺るがす一言。
俺はその言葉を聞かなかったことにした。
みなみ・・・・ごめん。
ホントはもっと、別の方法、あるかもしれないけど。
多分、これが1番、早くお前を解放してやれる方法だと思うから。
「ほんま不器用やな。呆れるくらい。」
「自分でもそう思うよ。」
俺にとって、みなみ以上の友達はいないんだ。
だからこそ、このまま…苦しいまま…一緒にいなくてもすむように。
俺は、今までの俺たちの関係に別れを告げようと思う。
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