残像:4


それからの僕は、半年間は大学を卒業するためだけの日々を過ごし、無事、卒業すると同時に当然の顔をして、涼平の住むアパートに転がり込んだ。
本当は、大学も辞めてすぐにでも飛び込みたかったけれど、明日香との思い出のある大学を中途半端に投げることは出来なかった。僕なりの責任感に見せかけた卑怯さがそうさせた。

一人暮らしの涼平の部屋は殺風景で無駄なものが一つもない。きっとこれからも場所を取るのは僕だけなんだろう。親友を逃げ場にすることに居た堪れない気持ちにならなかったとは言わない、けれど、僕には後戻りできるほどの気力はなかった。半年間、寄り掛かるものを探しながら、この場所に辿り着くことを待ちわびて耐えていたのだ。それを容易に手放す気には到底なれなかった。

涼平は僕を部屋に招き入れた時、ただ一言、微笑みながら言った。

「これからも俺はお前の友達だよ。」

涼平らしい優しい言葉。
僕が涼平を逃げ場にしようということをちゃんと分かってるからこその言葉。



明日香がいなくなって1年。
涼平に縋りつくようになって半年。
何度も“ゴメンな”と心の中で無意味な謝罪を続けながら、僕は死んだように生きている。

―――――あの残像に縛られたまま。



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